
「自分は大丈夫」が最も危険 ― 特殊詐欺が突く心理の隙
特殊詐欺の巧妙な罠を見破る「守備力」浜自治区で防犯講習を実施しました。
特殊詐欺が突く心理の隙
「特殊詐欺に引っかかるのは、判断力が弱い人だけ」。
そう思っていませんか?
実は、被害に遭った方の約80%が「自分は大丈夫だ」と信じていたというデータがあります。
2026年3月29日、私は山梨県甲府市上曽根町地内の浜自治区にお招きいただき、地域の皆さまに向けて特殊詐欺対策の防犯講習を実施しました。元警察官として26年間現場の第一線に立ってきた経験から、犯罪者の手口と人間の心理の弱点を知り尽くした立場でお話しさせていただきました。
本記事では、講習でお伝えした「詐欺の罠の仕組み」と「今日から実践できる多層防御」を、ご参加いただけなかった方にもお届けします。
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特殊詐欺が突く3つの「心理の罠」
講習では、まず特殊詐欺がなぜこれほど被害を生み続けるのか、その心理的なメカニズムをお伝えしました。
罠1:楽観バイアス ―「自分だけは騙されない」
人間には「自分にとって都合の悪いことは起きないだろう」と考える心理的な傾向があります。これを心理学では楽観バイアスと呼びます。
特殊詐欺の知識を持っていても、それを「自分事」として捉えられないことが被害の第一歩です。知識はあっても警戒はしていない。この隙を犯人は突いてきます。
私が現職時代に扱った事案でも、「まさか自分が」とおっしゃる被害者の方が大半でした。詐欺の手口を知っていることと、自分が標的になっていると気づけることは、全く別の能力なのです。
罠2:「状況の力」― 冷静さを奪う演出
犯人は電話口で警察官や銀行員、市役所職員を名乗ります。こうした権威ある肩書きを出されると、人は服従状態に陥りやすくなります。
普段なら「おかしい」と思えることでも、「警察からの緊急連絡です」と言われた瞬間、平時の冷静な判断力が働かなくなる。これが「状況の力」です。
犯人の手口は組織的にマニュアル化されています。相手の心理を段階的に追い詰め、考える余裕を与えないように設計されているのです。
罠3:「ATMでお金が返る」は100%詐欺
還付金詐欺で使われる最も典型的なフレーズです。
ATMの操作でお金が戻ってくることは、絶対にありません。
この一点だけでも覚えていただければ、還付金詐欺の被害は防げます。講習では、この「核心的な事実」を何度も繰り返しお伝えしました。
「典型的な思い込み」と「実際の現実」
講習では、参加者の皆さまと一緒に「よくある思い込み」を確認しました。
「家族の声は間違えない」→ 実は間違える
強いストレス下では注意力が極端に狭くなり、冷静な判断が困難になります。「息子さんが事故を起こした」と聞かされた瞬間、声の違いに気づく余裕はなくなります。
「詐欺の手口は知っている」→ 知識だけでは守れない
知識があっても「自分には起きない」という脆弱性認知の欠如があると、罠にかかります。手口を知っていることと、自分が狙われていると認識できることは別の話です。
「怪しい電話にはすぐ気づく」→ 犯人はプロ
犯人は素人ではありません。組織的に訓練され、マニュアルに従って行動しています。平時の心理を壊す「状況」を意図的に作り出すプロなのです。
被害を遮断する「多層防御」― 今日から実践できる4つの対策
心理の罠を理解したうえで、次は具体的な防御策です。講習でお伝えした多層防御は、1つの対策が破られても次の層で食い止める「城壁」のような考え方です。
対策1:自宅の電話を「常時留守電」に設定する
特殊詐欺の多くは固定電話から始まります。最もシンプルで最も効果的な対策が、自宅の電話を常に留守番電話に設定しておくことです。
犯人は留守電にメッセージを残しません。本当に用事がある方は、メッセージを残してくださいます。留守電を聞いてから折り返せば、犯人と直接話すリスクを大幅に減らせます。
あわせて、国際電話のブロックも設定しましょう。国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)に申請するだけで、海外からの不審な着信を遮断できます。「+1」や「183」「185」「187」から始まる番号は詐欺の可能性が極めて高いので、くれぐれもご注意ください。
対策2:家族で「愛言葉」と「確認ルール」を決める
オレオレ詐欺への最強の防御は、家族だけが知っている合言葉を決めておくことです。
日常的にその合言葉を使い、電話番号が変わったという連絡があった場合は必ず「元の番号」にかけ直す。このルールを家族全員で共有してください。
講習では「愛言葉を今日中にご家族と決めてください」とお願いしました。難しい言葉である必要はありません。家族の思い出に関する一言で十分です。
対策3:サポート詐欺(偽警告)は「Escキー長押し」で解決
パソコンを使っていると突然「ウイルスに感染しました!」という警告画面が表示される。これが**サポート詐欺(偽警告)**です。
画面に表示された電話番号には、絶対に電話しないでください。
対処法はシンプルです。キーボードのEscキーを長押しする。それでも消えない場合は、Ctrl + Alt + Deleteでブラウザを強制終了してください。これだけで解決します。
対策4:異変を感じたら、すぐ相談
少しでも「おかしい」と感じたら、お金を動かす前に手を止めて相談してください。
- 警察相談窓口:#9110(緊急でない相談)
- 消費者ホットライン:188
- 家族・近隣の信頼できる方
「恥ずかしい」と思う必要はありません。相談することは恥ではなく、自分と家族の財産を守る勇気ある行動です。
講習を終えて ― 「守備力」は地域の絆から
浜自治区の皆さまには、お忙しい中ご参加いただき心より感謝申し上げます。
講習後、参加者の方から「帰ったらすぐ留守電に設定する」「家族と合言葉を決める」というお声をいただきました。知識を行動に変えること。これが「守備力」の本質です。
私は元警察官として26年間、犯罪捜査に携わってきました。事件が起きてから対処するのではなく、起きる前に防ぐ。それが退職後にファミリアを設立した原点です。
特殊詐欺も交通事故も、共通するのは「自分は大丈夫」という思い込みが最大の敵であるということ。今日の講習が、浜自治区の皆さまの「守備力」を高める一助になれば幸いです。
まとめ:特殊詐欺から身を守る3つのポイント
異変を感じたらすぐ相談 ― #9110(警察相談窓口)に電話する勇気が、家族の財産を守る
「自分は大丈夫」が一番危険 ― 楽観バイアスを自覚し、「自分も標的になりうる」と認識することが防御の第一歩
多層防御で備える ― 留守電設定・国際電話ブロック・家族の合言葉・Escキーの4つの壁で被害を遮断\ 防犯講習・交通安全研修のご依頼を承っております / 元山梨県警 警部補が、地域の安全を守るお手伝いをいたします。 自治区・町内会・企業での防犯講習や、VR交通安全研修にご興味のある方は、 お気軽にお問い合わせください。 → お問い合わせはこちら
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この記事を書いた人
雨宮貴司(あめみや たかし)
ファミリア 代表
警察官として26年間勤務し、警部として現場の第一線に立つ。 在職中に数千件の交通事故を捜査した経験をもとに、 「事故が起きてからでは遅い。起きる前に止める」を理念に、ファミリアを設立。 VR交通安全研修・交通安全講話・防犯講習を通じて、 山梨から全国へ「本物の安全」を届ける。
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